Y婦長が亡くなったと知りました。
帯津病院時代にとてもお世話になった看護婦長さんです。
現代は看護師長と言うべきですが、Yさんが看護師としてバリバリ働いていた時代は婦長だったので今でもずっと婦長と呼んでいます。
もう90歳近いのでこんな知らせがあっても仕方のないことだとしても、永遠に死なないんじゃないかと思えるほどパワフルな人だったので、亡くなったと聞くとやはり悲しくなります。
すぐに怒る厳しい人でした。
幸い私は怒られた記憶はあまりありません。
それどころかとてもかわいがっていただいたのに、病院を辞めて高知へ行ってしまい期待に応えられず申し訳ないことをしました。
ただ、一度だけ怒られたことがあります。
神田神保町で会合があったときのことです。私たちは道に迷い集合時間に遅れてしまい、婦長から靖国通りの大きな交差点のど真ん中で怒鳴れました。
「このいなかっぺ!」
いくら待っても来ない私たちを心配し頭にきてしまったのでしょう。
交差点をのんびり渡ってくる私たちの姿を見とめると、頭から蒸気を吹き上げながら駆け寄ってきて雷を落とされました。
小柄なお婆さんが、たくさんの人の往来する交差点の真ん中で憚ることなく激怒し、「いなかっぺ!」を連呼する姿がどうにも滑稽で、私たちは笑いが止まらなくなりました。
つられて婦長も苦笑いを浮かべていたのを懐かしく思い出します。
婦長の厳しさの裏側には、いつも大きなやさしさがいっぱいにあふれていました。
Y婦長のご冥福を心よりお祈りいたします。
たくさんのことを教えていただき本当にありがとうございました。