謎の自転車と異次元の世界

よく知っていて迷うはずのない森、昔から慣れ親しんでいる山で男がなぜか道に迷ってしまいます。やがて見たこともない村にたどり着き、そこには見たこともない人々が見たこともない服を着て豊かで平和な暮らしをしています。男はその村で贅沢な歓待を受け数日後自分の村へ帰りますが、誰もその話を信じてくれません。そこで再び森に入りその村を探しますが二度とたどり着くことはできませんでした。。。

浦島太郎に代表されるこのような言い伝えは「隠れ里伝説」といい日本各地に伝わっているそうです。高知、特に山深い仁淀川上流域には隠れ里伝説がいくつか残っています。

日高村の隠れ里伝説はまだ聞いたことがありませんが、隠れ里がありそうな雰囲気はあります。例えば村には地図にない道がたくさんあり、その道がどこか地図にない場所へ連れて行ってくれる気がします。

そんな地図にない道、錦山公園の管理道の途中にある今は誰も使わなくなった林道の入り口に数か月前、1台の放置自転車を見つけました。

まだ新しい茶色のママチャリで鍵も付いたままです。タイヤを押すと空気が抜けているのでだいぶ前からその場所に置かれたままになっているようでした。登録シールなど所有者を示すようなものは何もついていません。

そこは周囲に家のない山の中腹で、管理道も林道も地元の人すらめったに来ない道です。林道についてはそれがどこまで続いているのか、山を下りて地域の人数人に聞いても詳しいことはわかりませんでした。おそらく蛇紋岩採掘跡の廃坑に続いているようです。

自転車を見つけた時、あたりには誰もいませんでした。どんないきさつでこの自転車がそこにあるのか全く想像ができません。盗まれた物であれ何であれその場所は道の悪い自転車で行くような場所ではなかったからです。

その後何度かその場所を通りましたが自転車はいつもそこにありました。ゴミと言うにはあまりにもきれいだったので私は自転車を落とし物として警察に届けることにしました。

しかし、その前に、もう一度あたりに人がいないか確かめることにしました。消えた自転車の所有者を探しに私は林道を奥へ進みました。

林道は地図上どころか地球上からも消え去る直前でした。落石や倒木が道をふさぎ、イノシシが掘り起こした痕もところどころにあるとても歩きにくい道。人の入った形跡はありません。そんな道に足を取られながら進むとやがて10メートルほど先に曲がり角が現れました。曲がり角の先に何があるのか、確かめてみるべきだとも思いましたが、なぜか先に進んではいけない気がして道を引き返し、自転車を警察署に届けました。

結局、警察でも持ち主は判明せず、昨日自転車は私の物になりました。

「盗難届も出ていません。不思議な自転車ですね」

警察署の窓口の女性も首をかしげていました。

いったいこの自転車はどこから来て、持ち主は自転車を置いてどこへ消えたのか。謎は深まるばかりです。

自分の物になったとはいえ、この自転車には乗る気になれません。

乗ればどこか異次元の世界へ連れていかれそうな気がするからです。

上の写真は林道とも自転車とも関係がありません。大滝山の金太郎岩です。

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