私は薄情な人間で、
苗字を同じくする実の祖父母のお墓参りをこれまでに一度もしたことがありません。
それどころかお墓がどこにあるかも知りませんでした。
そんな不人情の言い訳をあえてさせてもらえば、祖父母とは人生でたぶん5回ほどしか会ったことがないからだと思います。
ここだけの話、今月中旬まで祖父の名前の読み方すら知らなかった冷たい孫です。
今月中旬、祖父母が晩年を過ごした仙台のおばと会いに行くことになったので、
ついでに(失礼)祖父母の墓参りをしようと思い立ち、出発前父に
「仙台に行ったらおじいさんとおばあさんのお墓参りもしてこようと思う。」
と宣言すると、
「墓は仙台にはないよ。」
などと驚くことを言います。
「じゃあどこにある?」
と聞くと、
「青山霊園。」
なんだ。そこなら日帰りで行ける。ただ青山霊園も広いので、
「青山霊園のどこにある?ちょっと行ってくるからお墓の場所がどこにあるか教えてくれ。」
と言うと、
「知らん。俺も一度しか行ったことがないし、行った時はみんなで行ったから場所は知らないんだ。」
だそうです。
実の父親の墓の場所もわからないなんて、ここにも薄情な男がいました。
前置きが長くなりましたが、
今回、晴れて仙台でおばに実の祖父母の墓の住所を教わり、今日青山霊園へ行ってきました。
ところで、青山霊園なんてセレブな場所にお墓を作ったのは、東京で医者として大成功した私のおじ、つまり父の弟です。
見栄を張りたかったのだと思います。ちなみにおじの車はジャガー。
どんなにすごいお墓を作ったのだろうと今日は楽しみにしながら行ってみると、
我が一族の小さな墓はすでに雑草に埋もれていました。
墓石の名前が草で見えなくなっていて何度か前を通り過ぎてしまったほどです。
写真は墓石を覆っていた雑草のボス。なんだか知りませんがこいつはすでに草から木へと成長し立派な花だか実だかが付いています。
誰かが最近墓参りをした形跡は何一つありません。
どうやら薄情なのは私と父だけではないようです。
おかげで東京都心のど真ん中で素手で草刈りをする羽目になりました。
仙台にお墓があれば、晩年をずっと一緒に過ごしたやさしいおばが毎日のように手を合わせてくれただろうに、
父とおじしかいない東京にお墓を作ってかえって可哀想な気もします。
この墓に入っているのは祖父母の二人だけ。先祖のみんなが入っている墓は広島にあります。入れるなら私も広島に入りたい。
ある程度草を刈り、久しぶりに陽の光を浴びた墓石に手を合わせると、
不思議なことに空から雨粒が二つ、三つ落ちてきて私の頬と手を濡らしました。
見上げると空は晴れ。
冷酷な孫の墓参りでも、少しは喜んでくれたのかもしれません。