聖なるバスの残り火

私が二十年ぶりに多摩へ戻ってきてショックだったことの一つは、

連光寺行きのバスが廃止されていたことです。

多摩市の連光寺はその昔、明治天皇が狩りをされた聖なる場所で聖蹟桜ヶ丘の名の由来でもあります。

そのため私が若かりし頃の連光寺行きのバスは、京王線聖蹟桜ヶ丘駅を発着する10数本あるバス路線の中でも一番の花形で路線番号も01。

中学の頃の私はその聖なるバスに乗り、家へ帰るのが自慢でした。

バスは明治天皇の御幸された道をそのまま走ります。

聖なるバスなので絶対に廃止されることはないと思っていたのに、

20年ぶりに多摩へ帰ってみると連光寺はただの経由地となり、しかも1日にたったの1便だけ運行される寂しいバス路線と成り下がっていました。

それに番号も栄光の01を取り上げられ07に(写真)。

仕方がないのはわかります。

連光寺なんて誰も人のいない場所へ行くバスよりも、近くにある新しく開発された住宅街へ行くバスを増やした方が合理的です。

それにそのまま永山駅まで行ってしまった方が使い勝手の良いバスになるに決まっています。

本来なら完全に廃止してしまってもよかったのに1日に1便だけでも残してくれたのは、京王バスなりの聖なる路線への敬意だったのかもしれません。

01番がいまだ欠番になっているのもその現れなのかも。

それでも聖なるものが傍へ追いやられ消えつつあるのは悲しいものがあります。

聖なるものは日本からどんどん消えている気がします。

 

今日、偶然にもその連光寺経由のバスに乗ることができました。

戻ってきて2年が経つのに初めてのことです。

期せずして「連光寺」と書いてあるバスがやってきた時には、過去が戻ってきたのかと驚いて腰を抜かしそうになりました。

1日に1便しかないこの聖なるバスの最後の残り火に乗れて、今日はとても幸運でした。




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