母の秘かな愉しみ

終活で実家を断捨離中の父から今度は「お母さんの果実酒を処分してくれ」との依頼。

亡くなった母が果実酒作りを趣味にしていたのは私も知っています。

広口瓶が10個、多くて20個くらいが家の押入れに入っているだろうと、

「お安い御用だ。2時間もあれば全部終わるから10時に実家へ行くよ」と伝えました。

実家に着いて母の漬けた果実酒の瓶を出してみると次から次へと出るわ出るわ。古今東西ありとあらゆる種類の植物名のラベルが貼られた果実酒の瓶が奥からどんどん出てきます。

結局出てきた瓶は合計で129個。プラス味噌を漬けたカメが4つ。

秘かに母は果実酒を大量生産していました。

ただ保存環境が悪かったのかどれもこれも色も香りも悪く、もはや食用に供せようにはありません。

ドロドロの果実酒を実と液体と瓶に分別しながら、

「お母さん。うちにはだれも果実酒なんて飲む人いないんだから、そんなにたくさん作らないで自分で飲めるだけの量を漬けたらいいじゃん。」

と昔私が言ったのを思い出しました。

母は「だから私は不幸なのよ」というようなことを悲しげな顔で言って、私たちはケンカになったと思います。

親孝行したいのが本音なのに、どうしたわけか現実の私はずいぶん親不孝な息子でした。

単純に母とケンカした回数を数えたら、はるかに親孝行の数を上回るはず。

両方とも数えたわけではありませんが、ずいぶんとたくさんケンカはしました。仲は良かったのにどうしてなのか。今から考えると不思議です。

親不孝のついでに今回も母の大切な果実酒と味噌を丸一日かけて全部処分させてもらいました。

不平不満があったら父に言ってください。父が捨ててくれと言いました。

と、いちおう遺影には報告しています。

それにしても瓶129個プラス味噌4カメは大変でした。

これを書いている今、身体中が筋肉痛です。




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