
昨日の中秋の名月は雲のため見ることは叶いませんでしたが、
そこは秋、澄んだ空には今夜も大きな月が美しく座っています。
それにしてもいったい何の心境の変化か?
今夜、生まれて初めて月にうさぎの姿を見ました。
月の模様がうさぎに見える。と聞いたのは私がまだ疑うことを知らぬほんの小さな子どもの頃のことです。
あれはたぶん母親だったでしょうか。
「うさぎがいるでしょ」
と言われても、小さな私がどんなにがんばって見ても、月の中にうさぎが見えなくて困ったのをぼんやりと思い出します。
以来何千回何万回と月を見たか知りませんが、今日まで月にうさぎを見たことは一度たりともありません。
まだ純粋だった私が、生まれて初めて疑うことを知ってしまったのは、
もしかしたら月のうさぎを教えられたあの夜だったのかもしれません。
すべてを信じていた真っ白だった私の心に、疑いという最初の汚れがついてしまったのが、母と月を見上げたあの月夜だったとしたら、少し悲しい気がします。
あれから五十年の時を経て、今夜どうしたわけか突如として月の模様がうさぎに見えました。
うさぎといえばのあの耳も今夜ははっきりと見えます。
不思議なこともあるもんだと、
月のうさぎとの初対面を喜んでいます。