川の妖怪を紹介します

日高村宇井地区に赤ハゲ橋という名の橋があります。
その傍らには少し怖いエンコウ(河童)の像が。

昔々、日下川のこの場所は大きな深淵でした。
ある日、おじいさんがその淵沿いに馬をつないでいたところ、水底からエンコウが出てきて、手綱を自分の体に巻きつけると馬を水中へ引っ張っていきました。馬も途中まではおとなしくエンコウに引っ張られていましたが、腹が水に浸かるとびっくりして自分の馬小屋めがけて一目散に走り出しました。エンコウは体に巻きつけている手綱を解く間もなく走る馬に引きづられたために、皮が剥け血だらけのひどい姿に。ようやく追いついたおじいさんが絡まった手綱を解いて助けてあげるとエンコウは泣き叫びながら川へと帰っていきました。
その日以来毎朝、おじいさんの家の軒下の木鉤に新鮮な魚が掛けられるようになり、皆エンコウの恩返しと喜びましたが、鉤を鹿の角に変えるとぱったりと魚を持ってこなくなりました。
人々は、皮がむけて赤ハゲになったエンコウにちなんでこの淵の橋を赤ハゲ橋と名づけ、痛くて「うーうー」とうめくエンコウの泣き声にちなんでこの地区を宇井(うい)と名づけたそうです。
また、子どもの水難除けのお守りに鹿の角を身に付けるのは、この故事に由来すると言われています。
宇井のエンコウ像は典型的な河童の姿をしていますが、調べるとエンコウと河童とは違うようです。
エンコウは身長1メートルほどのヌメヌメした猿のような姿をしていてとても嫌な臭いがします。
蛙のような青い体、頭には皿、甲羅を背負ってキュウリが大好きな河童とはだいぶ違います。
さらに水の都高知にはもう1種類、川の妖怪がいます。シバテンです。
シバテンが大人になったのがエンコウだという人もいますし、シバテンと河童は同じものだという人もいます。
謎に包まれたシバテンですが、ただ一つはっきりしているのはシバテンは相撲が大好きだということです。出会うと必ず相撲を挑んできます。そしてかなり強い。
日高村宇井地区の伝説に登場したのはシバテンではなくエンコウですが、昔は「宇井のエンコウ相撲」といって高知以西では最大の相撲大会がありました。
「宇井のエンコウ相撲」は、人口減少のために毎年開催が危ぶまれながらも今もがんばって存続しています。
シバテン、エンコウ、河童とだいぶごっちゃになっていますが、高知の古い人の中には今でもエンコウと会ったことのある人や、シバテンと相撲を取ったことのある人がいます。
「わしが子どもんころはよくシバテンが出ての。相撲ばとって遊びよった」
酒の席ではよくこんな話が出ます。
嘘のように思われるかもしれませんが、私には本当のように思えます。
日高村の川や沢や淵には、神々しさとも言えるような人を寄せ付けない奥深さがあります。その水を見ているとエンコウやシバテンがいても不思議ではない気がしてきます。
いずれ私もシバテンと相撲を取る日が来るような気がしています。

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