地球から人類が消えたその後には、代わりにイノシシが地上の支配者になるのではないか。
高知に住んでいる頃はよくそんなことを考えました。
山に入るとそこかしこに夜中にイノシシが大活躍した痕跡があり、止めようのない彼らの勢いを感じたものです。
その後、広島へ行ったとき、あるおじいさんから山で猿の集団にからまれた恐怖体験を聞き、
人類滅亡のあかつきには、イノシシと猿が地上の覇権を巡って争うにちがいない、などと思ったこともありました。
今、イノシシも猿もいない東京の多摩に住み、人類後の地球に思いを巡らすと、
植物の葛(くず)が地上の支配者になるような気がしています。
葛は本当にタフな植物で、刈っても刈っても消えることはありません。
雑草を刈った後、一番最初に生えてくるのが葛です。
一度根絶やしにしてやろうと、スコップと鍬で根を掘り起こそうとしましたが、葛の根は地中を縦横無尽に走っているので、これを取り除こうとすると実家の庭の木と草花も全部掘り起こしてしまうことになります。
つまり実家の庭の木と草花はみんな葛の人質に取られました。
もはや手も足も出ません。
それでも葛を放っておけば、そのツタはやがて庭も家も全てを覆い尽くしてしまいます。
欧米で葛は別名をグリーンモンスター。
プチプチと小まめにツタを刈り取って、次の地上の支配者との終わりなき戦い、勝ち目のない消耗戦を日々繰り広げる夏の入口です。