和紙作りでイノシシの話を聞く

日高村よりもさらに山深い仁淀川町へ和紙作りの手伝いに行ってきました。

和紙の原料である「楮(こうぞ)」(写真下)という木を蒸して、幹から皮をはぎ取る作業の手伝いです。急峻な山肌に張り付くように建つ古民家の作業場で、近所から集まった老若男女(マイナス若)8名が集って黙々と作業に取り組みました。

村の住職は和紙作りと禅に共通するものがあるとおっしゃっていた気がします。この作業、神がかり的な何かがピタッと調和したときに木の皮がとてもきれいに剝けます。それが楽しくて一日中夢中で皮を剝いていました。

作業場では、仁淀川町の地域性なのか動物の話題がよくでました。

私と同年代くらいの男性はネットで、テレビに出演する犬は撮影の邪魔にならないように手術で声帯を取り除いてしまうという情報を見て以来、朝のテレビに登場する犬のソラが心配で毎朝テレビにくぎ付けだったそうです。

「今朝やっとソラが吠えよった」。ソラの声帯の無事が確認できて心底ほっとした様子で語ってくれました。

土佐男のやさしさを垣間見るエピソードです。

海沿いの地域おこし協力隊になった東京出身の女性は、土佐の男はちょーラテン系だと言っていましたが、内陸の土佐の男には、信じられないくらいやさしい人が時々います。

そして、このブログでも毎度おなじみのイノシシも話題になりました。

山で何度もイノシシと遭遇したことがある80才くらいのおばあさんがいろいろと教えてくれました。

「イノシシが真っすぐしか走れんゆうのは嘘やき。走っててもあいつら上手に曲がりよる」

「だが猪突猛進ちゅうんは本当や。イノシシはちょっとした木なんぞバキバキなぎ倒して突っ込んでくるき。そりゃあ恐ろしいもんじゃ」

「鎌ならイノシシに勝てるが?」作業場にいた誰かが聞きました。

「鎌じゃ無理や。ナタが必要じゃ」

「イノシシは怒ると毛が逆立って包丁みたいな武器になるき。そうやきイノシシにぶつかられると大けがするが。」

イノシシを知っている人はイノシシをとても恐れます。

誰かが「イノシシ見たら猪鍋を食いたくならんが?」と聞くと

「とんでもにゃあ!誰があんなもん食うが!」

もちろんイノシシの話題だけではなく、竹を伐るのは新月の日がよいとか、山で生きる様々な知恵が作業場では語られました。

ぜひ次の工程もお手伝いしたいと申し出たのですが、残念なことに、手伝いが必要な工程は楮の皮剥ぎだけで、その日でもう終わってしまいました。

次は今年の12月だそうです。

新年早々、自然とともに生きる力強さを体験できる一日となりました。

表紙の写真は、はぎ取った楮の皮を干しているところ。

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