古い友人ががんになる

古い古い友人ががんになったと聞きました。

私も二十年近くがんの患者さんに鍼を打っているので、

何か少しでもお役に立てればと焦るのですが、

がんというのはとても個人的で個性的な病気で、

同じ病名であっても同じパターンをたどる人とはこれまでに一度も会ったことがありません。

そのため今でも新しい患者さんが来るたびに試行錯誤の繰り返し。

遠方の友人に的確なアドバイスを伝えるのはなかなか難しく、頭を抱えてしまいます。

それでも、二十年近くもやっていれば患者さんから学んだことはたくさんあります。

がんになっても10年、20年と死なないで元気に暮らしている人たちに共通しているのは、

みなさんとても自分の欲求に素直でした。

どんなに良い治療法や健康法でも、自分が嫌だとなったら絶対にやらないし、

逆に気に入った治療法や健康法はどんどんやる。

そして基本無理はしません(経済的にも、体力的にも、精神的にも)。

そんな人が多いと思います。

性格や心の在り方はあまり関係ないようです。

この点、がんを治したという人の講演や本を読むと、

たいてい「いつも明るく前向きでいなさい」と書いてありますが、

それは自分が病気を克服して元気になったから言えるだけで、

実際のがんの現場、つい最近医者から「あなたもうすぐ死にます」と言われて、明るく前向きでいられた人と、私はこれまでに一人も会ったことはありません。(明るく前向きなフリを無理にしている人はいました)。

暗くうつむいて毎日泣いていたって全然かまいません。

とにかく自分が気に入ったもの、自分に合っていると感じるもの、どこかしっくりくるもの、それは治療法でも健康法でも食べ物でも生活習慣でもなんでも、をできるだけ楽しんでやり、

自分が気に入らないもの、たとえみんながすごく良いものだと言っても自分はどこかしっくりこないものは断固として拒否すべきです。

自分が健康になる方法は、頭ではなく自分自身の体が一番よく知っています。

できるだけ外の雑音をシャットアウトして、(私のこの文章が一番の雑音なのはさておき)、

ご自身の体が何を欲しているのか、じっと耳を傾けて聞いてみてください。

ところで、

医者にとってのがん治療は、がん細胞を体から消滅させることですが、

一方、患者にとってのがんの治療は自分が健康に生きることです。

がんがまだ体の中にあったとしても、この先20年、30年、40年、天寿を全うするまで健康に生きることができれば、私たちのとってのがんの治療は十分に成功です。

私の知人に30年間末期がんを患っている人がいます。

30年前、この人の主治医は「あなたの余命は残り半年です」と言いました。

以来30年、知人は末期がんの患者として元気に暮らしています。

この人は特別な人ではありません。

結構たくさんの人が末期がんとして医者の余命以上の期間を元気に暮らしています。

体の中の癌細胞が消えようと消えまいと、そんなことはどうでもよいこと。

ぜひ友人には元気になっていただき、いつか数十年ぶりの再会を果たしたいと願っています。




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