仙人の歩き方

このブログでたびたび登場する「日高村の仙人」(「いのししの道」「仙人、素手でマムシをさばく」参照)を改めてご紹介します。

仙人は、70代の引退した学校の先生で、元ハンターです。植物の研究家であり、地域の歴史や文化の研究家でもあります。たぐいまれな読書家で膨大な数の本に囲まれて古い家に一人で暮らしています。一緒に暮らしていた奥様は、つい最近お孫さんが生まれたばかりのお嬢様が住んでいる隣町へ行ってしまったからです。

イベント打ち合わせのために仙人の家を訪ねました。

そして、おそらく仙人の家は、奥様がいないために仙人の個性が強く出てしまっているようです。

門を入ると、まず納屋の中に吊るされた背骨付きの鹿の頭蓋骨が目に飛び込んできました。背骨の付いた頭蓋骨を見るのは映画「プレデター」以来で、生で見るのは初めてです。度肝を抜かれました。

仙人が撃ったものかと聞くと、

「もう殺生はせん。ハンティングは何年も前にやめた」との返事。

大豊町の山奥で、木に角が挟まって動けなくなりそのまま死んで白骨化した鹿を見つけたので、埋葬するために持ってきたそうです。

仙人は、長年植物の研究を続けてきた結果、草一本にも命が宿っていることを実感し、また古今東西の宗教書や死生観についての本を読んできた結果、命の大切さを痛感したために今ではハンティングはまったくやらなくなったそうです。

私の見たところ仙人は肉もあまり召し上がらないようです。

「命のことを考えると食べるもんがなくなってきた」と笑っています。

しかし、植物を観察しに山を歩くときは鉄砲を持ち犬を連れていくそうです。ハンターはやめたと聞いたばかりだったので首をかしげました。

「イノシシに襲われた時のためですか?」

「イノシシに襲われたことはないし出ても撃たんよ」

「何を撃つんです?」

「鉄砲は飾りや。こんな爺さんがなんも持たんで山を歩いておればみんなに怪しまれるが、鉄砲と犬がおればみんな猟師が歩いていると思うてくれる。何も撃たん」

私も村の山を歩くときはだいぶ怪しまれていることを思い出しました。今は山を歩いている人はほとんどいないのでとても不審に思われます。山の達人の仙人でさえも不審者に思われることがあるなら私などなおさらです。

ただ私が鉄砲を持って歩いていたらもっと怪しくなります。鉄砲を持ったことがないので危険人物まるだしになることでしょう。カマでさえも持ちなれていないのでドキドキしながら持ち歩いています。

さすがに仙人は鉄砲と犬がさまになっているはずです。

ところで私は見たことがないのですが、仙人は以前白い髭を生やしていたそうです。外見がまさに仙人だったので村の人から「仙人」と呼ばれていました。

私にとっては中身もまさに仙人です。

“仙人の歩き方” への2件の返信

  1. とっくの昔に猟はやめたけど鉄砲を持って山に行く件は、結局、山で気分がノッてしまった仙人はぶっ放してしまった・・・。
    というオチを予想してしまいました。
    仙人の話が出てくると、読んでいる此方までワクワクしてきます!

    1. 職場の裏にキジが住んでいることを教えると一瞬仙人の目がギラつきました。
      そのすぐあと「街中じゃ鉄砲が撃てん」とボソッとつぶやいたので、もしかしたら山ではぶっ放しているかもしれません。
      コメントありがとうございます。

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