三遊亭円朝の四国

明治時代の落語家、三遊亭円朝の本を最近愛読しています。

落語家の本なのに毎度馬鹿馬鹿しいお笑いの話はほとんどなく、

大部分が仇打ちと幽霊と色恋沙汰と犯罪の話ばかり。

これが本当に面白く夢中になって読んでいます。

ある仇討ち話の中で、

酒の不始末で大切な顧客の刀を奪われてしまった番頭さんの親父が、

息子の不祥事を詫びるために四国八十八か所巡りをして江戸へ帰ってきたくだりがあります。

その親父が江戸の人たちに「四国には泥棒がいない」と主張するのですが、

知らない人が聞けば「嘘だろう」と思うはずですし、作中でもホラ話のようにサラッと流されています。

ところが四国に住んでいた私からするとまんざら嘘やホラだとは思えません。

と言いますのも、

以前高知県日高村に住んでいた時、役場の人にこの村に泥棒は出ますかと聞いたことがあります。

すると役場の人は「ここ10年の間に村で起きた窃盗事件は2件。1件は大阪から流れてきた旅の空き巣がやった泥棒と、もう1件はボケよったお爺さんが間違えて隣の家の車に乗って出かけてしまったこと」と教えてくれました。

これは実質0件ではないでしょうか。

三遊亭円朝さんは本当にいろんなことを知っていて、読んでいてとても勉強になります。

今の落語家さんは江戸の町をとても美化していますが、円朝さんの描く江戸はもっと汚れた人間でいっぱいのドロドロした町で、確かに今の東京へと続く町だと納得します。

江戸時代の四国には泥棒がいないと言うのも、今の四国を見ると納得できる話です。

写真は日高村の遅い午後。




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