
うちのアパートのゴミ集積所が、凶悪な2羽のカラスに荒らされようとしたまさにその直前に、
偶然にも車で帰ってきた私がカラスの悪事を未然に阻止いたしました。
2羽ともにかなりの巨大なやつで、その大きさは中型犬ほどはあったでしょう。
オスメスの判別は私にはつきません。
おそらくは夫婦、あるいは兄弟または姉妹、そんなところでしょうか。
ゴミをはさんで生意気にも互いに目くばせなんぞして、とりあえず息の合っているコンビではありました。
なかなか根性の座った連中で、私が車の中から手を叩いても、ゴミを突くのを止めようとはしません。
車から出て「コラー!」とやると、彼らはようやくゴミから一歩退きました。
さらに私が威嚇しながら近づくと、面倒くさそうに電線の上まで逃げましたが、2羽ともまだ未練がましくこっちの様子を伺っています。
「こいつら、まだゴミを諦めてないな。」
そこで私は車を駐車場に止めてから改めて棒か何かで武装して集積所まで戻り、再びカラスどもと対決することにしました。
私が車に乗り込むと、
カラスは電線から降りてきて、車の近くの塀にとまり、
「ギャアギャア!」
と偉そうに威嚇してくるではありませんか。
「そこで待っていやがれ!そっちがその気ならこっちだって相手になってやる!今車を駐車場に止めて戻ってくるから覚悟しとけよ!」
と私が車をゆっくり発進させると、なんとカラスは2羽とも私の車の周囲を一定の距離を置いて付いてきます。
「ギャアギャア!」
それも怒りながら。
私が駐車場に車を止め外へ出ても、2羽とも今度はもう逃げません。
私と一定の距離を置いて
「ギャアギャア!」
「わかったわかった。もう脅したりしないから、お前たちも俺を脅すな。あ、あとゴミは荒らさないようにしてくれよな。」
と心の中で言ってもカラスには通用しません。
なんと2羽はアパートの私の家の玄関まで私につきまとい、ゴミ荒らしを邪魔された抗議の叫びをずっとあげ続けました。
最後はついに私が「コラー!」と怒り、ようやく玄関からは離れてくたものの、しばらくは近くをウロウロして、やがてどこかへ飛んで行ってくれました。
カラスは執念深いといいます。
数日は上空に要警戒です。
ここ1年ほど、うちだけではなく近所のゴミはカラスに荒らされずにすんできました。
それは1年ほど前にうちの隣に引っ越してきたゴールデンレトリバーのサメのおかげです。
サメというのは犬の名前。
また犬一人で引っ越してきたわけではなく人間の飼い主と一緒です。念のため。
そのサメがゴミ集積所の前の道で1日に何度も何度も用を足すので、
カラスはその図体の大きな犬に恐れをなしたのか、近寄らなくなっていました。
ただ実はこのサメちゃん、見た目の大きさとは裏腹にものすごく気のやさしい穏やかな犬で、おまけにとても人懐っこい。
私の姿を見るとうれしくて尻尾をブンブン振り回しながら飛んできます。
だから道をおしっこだらけにされても全然気になりませんでした。
カラスに荒らされた誰かの生ゴミを掃除するより掃除しなくていい犬のおしっこの方がよっぽどましです。
しかしながら、
こうしてカラスが現れたところをみると、
どうやらサメの心やさしい性格が、ついにカラスどもにもバレてしまったかもしれません。