カブトムシの意味するところ

「カブトムシが来た!」

朝。夜勤終わりに職場でくつろいでいると妻からのLINE。

驚いている妻を表すクマのスタンプとうちのアパートの外廊下の床を物色しているカブトムシの写真が送られてきました。

「どうしよう?」

どうしようったって、そのままにしておいたら、朝出勤に出てきた寝ぼけまなこのアパートの住人に踏みつぶされてしまうかもしれません。あるいはまた隣の部屋に住んでいる巨大犬にパクッとひと口に食べられてしまう危険もあります。

「うちにある虫網ですくいあげて、実家の庭の植え込みの安全な場所に逃してやってくれ」と頼むと、

「怖くてできない」とつれない返事。

カブトムシが怖いったって、この世の中でカブトムシが人間を襲って食べたり殺したなんて話は聞いたことがありません。一方その逆はしょっちゅう聞きます。

むしろ怖がっていいのは妻ではなくカブトムシの方です。

でもまあ怖いものはしょうがないので、私が家に帰ってからカブトムシを救出することにしました。

それまで無事でいてくれたらいいが。

心配しましたが、家に着くとカブトムシの姿はすでになく、おそらく無事、多摩丘陵の森にある自分の家へ飛んでいってくれたのだと思います。

それにしてもなぜカブトムシはうちのアパートに来たのでしょう?

昔高知に住んでいた頃、山の仙人と呼ばれる老人から聞いたことがあります。

「カブトムシだのクワガタだのゆうもんはなあ、木の腐りゆう匂いを嗅ぎつけて来るがよ」

私のアパートも相当古く、見た目も所々ガタがきています。

カブトムシ来訪のおかげで、

ついに建物の中身まで腐ってしまっていることがいよいよ判明いたしました。

あとはどうか私たちが高知へ戻るまで、アパートが崩れず建っていてくれることを願うのみです。

ところで、

カブトムシの写真は載せません。最近は虫が嫌いな人が多く、人目に触れる場所に虫の写真を置かないのが暗黙のルールと聞いたことがあるからです。

代わりに以前撮った当たり障りのない空の写真を置きます。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。